A-08
「長年連れ添ったパートナーが浮気をしている。でも、私たちは籍を入れていない……」
入籍をしていない、いわゆる「内縁関係(事実婚)」の場合、法的な夫婦ではないため慰謝料は請求できないと諦めてしまっていませんか?
結論から申し上げますと、内縁関係であっても、不貞行為に対する慰謝料請求は可能です。
ただし、法律婚(入籍している夫婦)に比べて、「関係性の証明」というハードルが一つ増える点に注意が必要です。
今回は、内縁関係における不倫慰謝料の請求条件、相場、そして請求を成功させるためのポイントを弁護士が解説します。

紙切れ一枚がないだけで、あなたの涙が安くなる……なんてこと、あるわけないでしょう。法律だって時には『形式』よりも、二人が積み重ねた『歴史』を見るものよ。
| Q1. 籍を入れていないパートナーが浮気しました。慰謝料は請求できますか? | 可能です。 法律上の夫婦(法律婚)でなくても、二人の関係が「内縁関係(事実婚)」として認められれば、法的に保護されるため、不貞行為に対する慰謝料請求は堂々と行うことができます。 |
| Q2. 単なる「同棲」と、法的な「内縁関係」はどう違うのですか? | 慰謝料が取れるかどうかの最大の境界線です。単に恋人と一緒に住んでいるだけの「同棲」では請求できません。法的な内縁関係と認められるには、**「夫婦として共同生活を送るという合意(婚姻意思)」と「生計を共にする実態」**の2つを証明する必要があります。 |
| Q3. パートナーが「あれはただの同棲で、結婚する気はなかった」と言い逃れしてきそうです。 | 最もよくある卑劣な言い逃れです。これを封じるため、住民票の続柄(「未届の夫/妻」の記載)、財布(家計)が一つであること、親族への紹介事実など、「夫婦同然の生活実態」を示す客観的な証拠を突きつけてください。 |
| Q4. 内縁関係を証明するために、具体的にどんな証拠を集めればいいですか? | **「社会的な儀式」と「生活の記録」**が鍵です。結婚式の写真や指輪の領収書、連名で届いた年賀状、賃貸借契約書の記載(同居人欄)、あるいは3年以上といった長期間の同棲歴を示す書類などが強力な証明になります。 |
| Q5. 籍が入っていない場合、慰謝料の金額は安くなってしまいますか? | 安くはなりません。相場は法律婚と同じ「50万〜300万円」です。 籍の有無ではなく、「内縁期間の長さ」や「不貞の悪質性」「浮気によって関係が破綻したか」といった要素で金額が決定されます。 |
| Q6. 内縁の期間がどれくらいあれば、慰謝料は高額になりますか? | 過去の判例では、15年以上の長期間の内縁関係を一方的に破棄して不倫相手と生活を始めたケースで、200万円の高額慰謝料が認められています。期間が長いほど、裏切りの悪質性が高く評価されます。 |
| Q7. 浮気相手から「結婚してない(独身の彼氏だ)と思っていた」と反論されました。 | 相手に慰謝料を払わせるには、「二人が内縁関係であると知っていた(故意)」または「少し注意すれば分かったはず(過失)」の証明が必要です。相手のSNSやLINE履歴から「奥さん(内縁の妻)にバレないようにね」といった発言を掘り起こし、嘘を論破してください。 |
| Q8. 逆に「浮気する前から、二人の関係は冷え切って破綻していた」と主張された場合は? | 責任逃れの常套句です。「関係の破綻」が認められると慰謝料は取れません。これに対抗するには、浮気発覚直前まで一緒に行った旅行の写真、親密なLINE、生活費のやり取りなど、「円満だった事実」を証拠として提出し、相手の嘘を叩き潰してください。 |
| Q9. 内縁関係でも、不倫の証拠(ラブホテルへの出入りなど)は必要ですか? | 絶対に必要です。 「内縁関係の証明」と「不貞行為(肉体関係)の証明」は別の問題です。関係性を証明できても、肉体関係の証拠がなければ慰謝料は取れません。探偵などを使い、言い逃れできない決定的瞬間を確実に押さえてください。 |
| Q10. 内縁の浮気トラブルを自力で解決するのは難しいですか? | 法律婚以上に困難です。 「内縁の証明」「不貞の証明」「相手の故意・過失の証明」という3つの高いハードルを越えなければならないためです。相手の「ただの同棲だ」という嘘に丸め込まれる前に、客観的な証拠を持って弁護士に相談するのが確実な必勝戦略です。 |
1. そもそも「内縁関係」とは? 単なる「同棲」との違い

慰謝料請求ができるかどうかの分かれ道は、二人の関係が法律上の**「内縁(準婚)」**と認められるかどうかにあります。
単に恋人同士が一緒に住んでいるだけの「同棲」では、法的な保護の対象とならず、慰謝料請求は原則として認められません。
裁判実務において、内縁関係と認められるには主に以下の2つの要件が必要です。
【内縁関係の成立要件】
- 婚姻意思(こんいんいし) 「夫婦として共同生活を送る」という合意がお互いにあること。
- 夫婦共同生活の実体 生計を共にし、夫婦同然の生活実態があること。
内縁関係の判断要素
相手方が「ただの同棲だった(結婚する気はなかった)」と逃げられないよう、以下のような客観的な事実が重要になります。
【比較表】内縁関係と単なる同棲の違い
| 判断ポイント | 内縁関係(慰謝料請求の可能性:高) | 単なる同棲(慰謝料請求の可能性:低) |
| 住民票の記載 | 続柄が**「夫(未届)」「妻(未届)」**となっている | 「同居人」となっている、または住民票を移していない |
| 家計(財布) | 財布が一つで、共同で管理している | 家賃や食費を折半しているだけで、財布は別々 |
| 親族への紹介 | お互いの両親に紹介済み、親族行事に参加している | 親に会わせたことがない、または「友人・恋人」として紹介 |
| 結婚式・指輪 | 結婚式を挙げた、婚約指輪や結婚指輪がある | 特にない |
| 同居期間 | 長期間(目安として3年以上など) | 短期間(数ヶ月〜1年程度など) |
| 子供 | 二人の間に子供がいる、または認知している | いない |
内縁関係を証明するための重要証拠
相手方が不倫発覚後に「ただの同棲だった(結婚する気はなかった)」と責任逃れをするケースは少なくありません。
法的に内縁関係であることを証明するためには、以下のような客観的な証拠を揃えておくことが重要です。
2. 内縁関係が認められた裁判事例

法律上、内縁関係は「婚姻に準ずる関係(準婚)」として扱われます。 判例でも、内縁の夫婦はお互いに貞操義務(浮気をしない義務)を負うとされており、これを侵害された場合、精神的苦痛に対する損害賠償(慰謝料)を請求する権利が発生します。
つまり、「籍が入っているかいないか」に関わらず、平穏な夫婦生活を壊された被害は償われるべきというのが法の考え方です。
【法的根拠】内縁関係を守るための裁判例と法律
| 根拠となる判決・法律 | 内容・要旨 | 弁護士からのポイント |
| 最高裁判決 (昭和33年4月11日) | 「内縁関係は婚姻に準ずる関係(準婚)である」とし、不当に破棄された場合や、第三者(浮気相手など)によって侵害された場合は、法的保護の対象になると判断しました。 | この判決により、籍を入れていない夫婦であっても、法律婚と同様に**「関係を邪魔されない権利」**があることが確定しました。 |
| 民法709条・710条 (不法行為による損害賠償) | 故意または過失によって他人の権利を侵害した者は、それによって生じた損害(精神的苦痛を含む)を賠償する責任を負うと定めています。 | 不倫(不貞行為)は、パートナーの「平穏な共同生活を送る権利」を侵害する行為です。内縁関係もこの**「保護される権利」に含まれる**ため、法律に基づき慰謝料請求が可能です。 |
このように、裁判実務においても「内縁関係の不倫=違法行為」として確立されています。したがって、内縁関係であることを証明できれば、堂々と慰謝料を請求することができるのです。
3. 慰謝料の相場はどれくらい?【裁判例5選】

内縁関係であっても、慰謝料の相場は法律婚の場合と大きく変わりません。一般的には以下の範囲内になることが多いです。
慰謝料の目安:50万円 ~ 300万円
金額は、以下の要素によって増減します。
【裁判例5選】ケース別・慰謝料認定額
実際に裁判で認められた慰謝料の事例を紹介します。
「関係が破綻したかどうか」「婚姻期間(内縁期間)」などが金額に大きく影響している点にご注目ください。
| 判決(裁判所・時期) | 内縁期間 | 主な増減要素(認定された事情) | 慰謝料額 |
| ① 東京地裁 (平成25年) | 6年 | 【高額ケース】 不倫相手が妊娠し、それが原因で内縁関係が破綻。内縁の妻が精神的に深く傷ついたことが考慮された。 | 330万円 |
| ② 東京地裁 (平成21年) | 15年 | 【熟年・長期間】 15年以上という長期間の内縁関係があったにもかかわらず、一方的に関係を破棄して不倫相手と生活を始めた悪質性を考慮。 | 200万円 |
| ③ 東京地裁 (平成19年) | 3年 | 【標準的ケース】 不貞行為によって内縁関係が破綻。不倫相手は「内縁関係とは知らなかった」と主張したが、退けられた。 | 150万円 |
| ④ 東京地裁 (平成24年) | 20年 | 【関係継続ケース】 不貞行為はあったが、最終的に内縁関係は修復され、別離には至らなかったため、減額された。 | 80万円 |
| ⑤ 東京地裁 (令和元年) | 1年未満 | 【短期間ケース】 同居期間は短かったが、結婚式を挙げており内縁関係は明白。不貞により早期に破綻したことへの精神的苦痛を認定。 | 110万円 |
※上記の金額はあくまで一例です。実際の請求額は、相手の資力や証拠の強さなど、複合的な要因で決定されます。
4. 請求する際によくあるトラブルと対処法
内縁関係の不倫トラブルには、特有の「言い逃れ」が存在します。
ケース①:「内縁関係だとは知らなかった」と主張される
不倫相手が慰謝料を支払う義務を負うのは、「二人が内縁関係(夫婦同然)であること」を知っていた場合、または注意すれば知ることができた場合に限られます。 「独身の彼氏だと思っていた」「ただの同棲彼女だと思っていた」と反論された場合、不倫相手が内縁の事実を認識していたことを証明しなければなりません。
ケース②:「関係はすでに破綻していた」と主張される
「浮気をする前から、二人の仲は冷え切っていた」という主張です。すでに婚姻関係(内縁関係)が破綻していたと認められると、慰謝料請求は認められません。 これに対抗するには、浮気発覚直前まで円満な生活を送っていたことを示す証拠(LINEのやり取り、旅行の写真、日記など)が必要になります。
5. まとめ:諦める前に弁護士へ相談を
内縁関係の不倫慰謝料請求は、法律婚に比べて「内縁関係の証明」と「不倫相手の認識(故意・過失)の立証」という複雑なプロセスが必要です。
しかし、長年連れ添ったパートナーに裏切られた悲しみは、籍の有無に関係ありません。泣き寝入りせず、正当な補償を受ける権利があります。

積み重ねた年月を、ただの『同棲ごっこ』だったと言わせる気? ……あの人の裏切りを断罪できるのは、あなたが妻として尽くしてきた『歴史』と、決定的な『証拠』だけよ。
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