慰謝料を巡る交渉術

弁護士が教える「慰謝料を巡る交渉術」完全ガイド:フェーズ別の戦略を公開

交渉はタイミングによって戦略が大きく変わります。
本記事では、「弁護士介入前」「弁護士介入後」「裁判前」「裁判後」の4つのフェーズに分け、弁護士ならではの一次データと実務的な交渉術を伝授します。

  • 第1フェーズ:当事者同士の交渉(弁護士依頼前)
  • 第2フェーズ:弁護士による交渉(弁護士依頼後)
  • 第3フェーズ:裁判を見据えた交渉
  • 第4フェーズ:提訴後の和解交渉
  • 最終フェーズ:裁判終結後の請求と弁護士契約の終了

第1フェーズ:当事者同士の交渉(弁護士介入前)初期衝動を抑え水面下で動く

配偶者の不倫に気づいた直後、怒りに任せて相手を問い詰めるのは最悪の悪手です。この段階では、直接の交渉よりも「交渉のための武器(証拠)」を揃えることが最大のミッションとなります。

  • 口頭での合意は無意味と心得る: 当事者同士の話し合いで「慰謝料〇〇万円を払う」と口頭で合意しても、後になって「そんな約束はしていない」と覆されるリスクが非常に高く、紛争の火種になります。
  • 相手の「責任逃れ」を想定する: 自分が権利を持っていると確信していても、不倫相手(Y)が事実や責任を認めなかったり、支払う金額で折り合いがつかないケースが大半です。
  • 親族や知人だけで解決しようとしない: 当事者やその親族・知人等の間だけで問題を解決しようとすると、著しく困難な状態に陥ることが多いのが実情です。

どうやっても証拠が獲得できない場合の交渉戦略

2. 弁護士が介入後:主導権を握り、プレッシャーをかけるフェーズ

証拠が揃い、弁護士に依頼した段階から、法的な効力を持つ本格的な交渉がスタートします。

  • 内容証明郵便による「宣戦布告」: 弁護士はまず、不倫相手に対して損害賠償を求める通知書(配達証明付き内容証明郵便)を送付します。
  • 到達の証拠化: 配達証明付きにすることで、いつ相手に通知書が到達したかが公的に証明され、時効の中断などの効果を生じさせます。
  • 直接連絡の遮断: 通知書の末尾には通常「本件に関する問い合わせ等は本人ではなく代理人である当職宛にお願いします」と記載されます。これにより、相手が直接あなたに連絡してくるのを防ぎ、心理的優位に立ちます。

第3フェーズ:裁判前の最終交渉!金額の落としどころを探る「示談」

内容証明を受け取った相手から回答があった場合、双方の代理人(弁護士)同士で解決策を講じる話し合いが行われます。

  • 請求額と認容額の「大きなギャップ」を知る: 交渉において最も重要なのは「相場観」です。前述の通り300〜500万円が請求されることが多いものの、実際の裁判で認められる認容額は「150〜199万円」「100〜149万円」「200〜249万円」の順に多くなっています。
  • 7割が「半分以下」になる現実: 全体の約7割の事案において、最終的な認容金額は請求金額の半分以下にとどまっています。
  • 示談書の作成: 話し合いがまとまれば、その合意した内容を「示談書(和解書)」という文書にまとめます。

第4フェーズ:裁判後の交渉(訴訟提起〜和解・判決)

裁判外での交渉(示談)が不調に終わった場合、慰謝料請求訴訟を提起することになります。

  • 裁判所主導の和解(和解勧告): 民事訴訟法に基づき、裁判所は訴訟のいかなる程度にあるかを問わず、当事者に対して和解の勧告を適宜行うことができます。
  • 和解調書の強力な効力: 裁判上の和解が成立すると「和解調書」が作成されます。この和解調書は、確定判決と全く同一の効力(強制執行力)を有します。

最終フェーズ:終結後の請求と弁護士との委任契約の終了

  • 支払いが滞った場合の強制執行: もし相手が約束通りに支払わなかった場合、この和解調書(または勝訴判決)に基づき、相手の給与や預貯金を差し押さえる「強制執行」が可能になります。
  • 弁護士との契約終了:成功報酬の算定方法、いつまで業務が継続されるかについて紹介しています。

弁護士町田北斗

【監修:弁護士町田北斗】(東京弁護士会所属。2018年登録)

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