A-05
不倫(不貞行為)の慰謝料請求において、最もよくある質問の一つが「相場はいくらですか?」というものです。 一般的には「50万円〜500万円」と言われますが、この幅は非常に大きいです。
なぜ、これほどの差が生まれるのでしょうか。
裁判所は、不貞行為の「回数」「期間」「内容(悪質性)」、そして「夫婦関係へのダメージ(離婚したか否か)」「相手の収入や地位」を総合的に判断して金額を決定します。
本記事では、実際の裁判事例(判例の傾向)をもとに、どのようなケースで慰謝料が高額になり、逆にどのようなケースで定額となるかを解説します。

長い嘘には、高い利子がつくものよ。……バレていないと思ったその火遊び、すべて慰謝料に上乗せして請求してやりなさい。
1. 裁判所が金額を決める「5つの判断基準」

事例を見る前に、裁判官がどこを見ているかを知っておきましょう。
主に以下の要素が金額を左右します。
- 不貞期間と頻度
- 長期間(数年単位)や、高頻度(週に何度も密会)であればあるほど増額されます。
- 不貞の内容
- 不倫相手との間に子供ができた、自宅に連れ込んだ、などの事情は悪質性が高いと判断されます。
- 婚姻期間と子供の有無
- 婚姻期間が長く、幼い子供がいる場合、家庭崩壊のダメージが大きいとして増額されます。
- 夫婦関係の結末
- 不倫が原因で「離婚した」場合は高く、「離婚しなかった(再構築)」場合は低くなるのが原則です。
- 加害者の収入や地位
- 会社役員、医者、弁護士など社会的な地位があり、高収入である場合には、そうでない場合と比較して慰謝料の金額が高額になりやすいです。
- 会社役員、医者、弁護士など社会的な地位があり、高収入である場合には、そうでない場合と比較して慰謝料の金額が高額になりやすいです。
【表】裁判官の思考:慰謝料の「増額・減額」判定ロジック
裁判官は「サイコロ」で金額を決めているわけではありません。
「基本の相場」(離婚するなら150〜300万円、しないなら50〜150万円程度)をスタート地点とし、そこから**「悪い要素(増額)」と「マシな要素(減額)」を足し引きして**最終的な数字を決定します。
その「足し引きの計算式」にあたる、裁判官の脳内シミュレーションを表にしました。
| 具体的な状況 | 裁判官の思考・判断(心の声) | 金額への影響 |
| 期間・頻度 「3年以上続いている」「週2回会っていた」 | 「一時の気の迷いではない。関係は深く、裏切り期間が長いぶん、配偶者の精神的苦痛は甚大だ。」 | 大幅 ↑増額 |
| 夫婦の結末 「不倫が原因で離婚することになった」 | 「平穏だった家庭を破壊した責任は重い。償うべき損害のレベルはMAXに近い。」 | 大幅 ↑増額 |
| 不倫の結果 「不倫相手との間に子ができた(妊娠した)」 | 「家庭へのインパクトは計り知れない。妻(夫)にとって一生消えない傷を与えた。」 | 大幅 ↑増額 |
| 事後の態度 「嘘をつき続けた」「逆ギレした」「約束を破った」 | 「反省の色が全く見られない。被害者の精神的苦痛をさらに拡大させており、悪質性が高い。」 | ↑ 増額 |
| 主導権 「上司が部下を誘った」「既婚者と隠して誘った」 | 「誘った側に強い責任がある。誘われた側(部下など)は断りにくい立場だったかもしれない。」 | 主導側が↑ 従属側は↓ |
| 夫婦関係(元々) 「不倫前から会話なし」「家庭内別居だった」 | 「そもそも守るべき『平穏な家庭』が既に壊れかけていたなら、不倫による実害は少ない。」 | 大幅 ↓減額 |
| 経済力 「加害者に全く資産や収入がない」 | 「高い金額を命じても、支払えなければ意味がない(※あくまで参考程度だが考慮はする)。」 | 微 ↓減額 |
| 発覚後の対応 「すぐに謝罪し、慰謝料の一部を支払った。その後も真摯に対応している。」 | 「真摯に反省しており、被害者の感情も幾分かは鎮まっているはずだ。」 | 微↓ 減額 |
この表のポイント
裁判官は、一つの要素だけでなく**「総合的な事情(合わせ技)」**で判断します。
つまり、裁判で高い慰謝料を勝ち取るためには、「いかに相手が悪質か(表の上半分)」を示す証拠を一つでも多く提出し、裁判官に「これはひどい」と思わせることが勝負の分かれ目となります。
2. 【事例紹介】ケース別・慰謝料認定額の違い
では、具体的なケースで金額の差を見てみましょう。
※以下は過去の判例傾向に基づくモデルケースです。
【ケースA】離婚せず、回数も特定できなかった事例
- 状況: 夫が職場の部下と浮気。妻はLINEで浮気に気づいたが、決定的な証拠は少なく、夫も「数回食事に行っただけ」と主張。最終的に夫婦は離婚せず、やり直すことを選択。
- 認定された事実: 不貞期間数ヶ月、回数は不明確。
- 判決(慰謝料額): 約50万〜100万円
- 【解説】 「離婚に至らなかった」ことで精神的苦痛は比較的小さいとみなされます。また、「回数や期間を立証する証拠」が弱かったため、悪質性が低いと判断され、金額は低めに抑えられました。
【判例解説】離婚せず・証拠不十分な場合
| 評価項目 | 今回のケースの事実 | 裁判官の評価・判断 | 金額への影響 |
| 夫婦の結末 | 「離婚しない」 (関係修復を選択) | 精神的苦痛は、離婚に至った場合に比べて小さい(家庭は守られた)。 | ↓↓ 大幅減額 |
| 証拠の強さ | 「LINEのみ・回数不明」 (夫は食事のみと主張) | 肉体関係の回数や頻度が立証できておらず、悪質性が高いとまでは断定できない。 | ↓ 減額 |
| 不倫の期間 | 「数ヶ月程度」 | 長期間(数年単位)の不倫に比べれば、被害は限定的である。 | 基準通り |
| 決定金額 | 約30万〜50万円 | 【相場の下限クラス】 制裁的な意味合いが強い金額。 | 低額 |
この事例のポイント
このケースから学べる教訓は2つあります。
- 「離婚しない」=「慰謝料は安くなる」裁判所は「慰謝料=精神的苦痛の値段」と考えます。「離婚しなくて済んだなら、苦痛はまだマシだよね」と判断されるため、相場はガクンと下がります(一般的に30~50万円)。
- 「回数不明」は加害者に有利証拠が弱いと、裁判官は「もしかしたら本当に数回だけだったのかもしれない」と推定せざるを得ません。だからこそ、探偵の調査報告書のような**「〇月〇日と△月△日にホテルに行った」という具体的な回数の証拠**があれば、悪質性が立証され、金額が上がる余地があったと言えます。
【ケースB】不倫が原因で離婚、期間も長かった事例
- 状況: 結婚10年目。夫が特定の女性と約2年にわたり交際。探偵の調査により、月2〜3回のペースでラブホテルを利用していた事実(計数十回)が立証された。妻は精神的ショックで離婚を決意。
- 認定された事実: 不貞期間2年、継続的な肉体関係、これが原因で離婚。
- 判決(慰謝料額): 約150万〜250万円
- 【解説】 これが典型的な「離婚事案」の相場です。ポイントは**「2年間にわたり継続していた事実」が証拠によって証明された点**です。単発の過ちではなく、禁じられた関係を継続した「悪意」が認定されました。
【判例解説】離婚・証拠が完璧な場合
| 評価項目 | 今回のケースの事実 | 裁判官の評価・判断 | 金額への影響 |
| 夫婦の結末 | 「離婚する」 (婚姻関係の破綻) | 守るべき家庭が完全に破壊された。精神的苦痛のレベルは「最大」と判断される。 | ↑↑ 大幅増額 |
| 証拠の強さ | 「探偵調査で立証」 (月2〜3回×2年=数十回) | 「数十回の肉体関係」という客観的事実により、悪意と常習性が証明された(言い逃れ不可)。 | ↑ 増額 |
| 不倫の期間 | 「約2年間」 | 一時の過ちではなく、長期にわたり妻を欺き続けた「悪質な裏切り」である。 | ↑ 増額 |
| 決定金額 | 約150万〜250万円 | 【相場の標準〜上位】 離婚慰謝料として、社会的制裁を含む十分な金額。 | 高額 |
この事例のポイント
ケースAとの決定的な違いは以下の2点です。
- 「離婚」という結果の重さ裁判官は「不倫のせいで、積み上げてきた10年の結婚生活がゼロになった」という事実を非常に重く見ます。これが慰謝料のベースラインを大きく引き上げます。
- 「継続性」を証明する証拠の力もし証拠がLINEだけだったら、夫は「2年も付き合っていない、最近数回会っただけだ」と嘘をつき、期間の短さを主張して減額を狙ったかもしれません。探偵の調査によって**「2年間、定期的にラブホテルに行っていた」**という事実が確定したため、夫は減額の言い訳ができず、高額な判決に至りました。
【ケースC】極めて悪質(妊娠・同棲)な事例
- 状況: 夫が不倫相手と半同棲状態になり、生活費を家に入れなくなった。さらに不倫相手が妊娠・出産。妻はうつ病を発症し、離婚。
- 認定された事実: 不貞期間5年以上、不貞相手の妊娠、配偶者への遺棄(生活費未払い)。
- 判決(慰謝料額): 約300万〜500万円
- 【解説】 極めて悪質性が高いケースです。単なる浮気を超え、一つの家庭を完全に破壊したとみなされます。「期間の長さ」に加え、「妊娠」「別居の強行」といった事実が、慰謝料を相場の上限(あるいはそれ以上)まで引き上げました。
【判例解説】極めて悪質(妊娠・同棲・遺棄)な場合
| 評価項目 | 今回のケースの事実 | 裁判官の評価・判断 | 金額への影響 |
| 不倫の結果 | 「相手が妊娠・出産」 (隠し子が誕生) | 単なる裏切りを超え、別の家庭を形成している。妻への精神的打撃は計り知れず、修復は不可能。 | ↑↑↑ 特大増額 |
| 悪質性 (遺棄) | 「生活費を入れず半同棲」 (悪意の遺棄) | 夫婦の義務(協力・扶助)を放棄し、経済的にも妻を追い詰めた極めて身勝手な行動。 | ↑↑ 大幅増額 |
| 被害の程度 | 「妻がうつ病を発症」 (診断書あり) | 不倫と精神疾患の因果関係が認められ、健康被害に対する償いも加算される。 | ↑ 増額 |
| 不倫の期間 | 「5年以上」 | 極めて長期間にわたり、妻の人生を空費させた責任は重い。 | ↑ 増額 |
| 決定金額 | 約300万〜500万円 | 【相場の上限〜例外級】 通常の不倫慰謝料の枠を超え、最大限の賠償を命じるレベル。 | 最高額 |
この事例のポイント
このケースが「300万円オーバー」となる理由は、単なる「浮気」の域を超えているからです。
- 「引き返せない結果(妊娠・出産)」不倫相手との間に子供ができることは、裁判において最も重い増額事由の一つです。「遊びだった」という言い訳が通用せず、妻に対する背信行為の極みとみなされます。
- 「悪意の遺棄(いき)」勝手に家を出て行き、生活費も渡さない行為は、法律上の**「悪意の遺棄」**という別の離婚原因にも該当します。「不貞」+「遺棄」のダブルパンチとなるため、慰謝料も跳ね上がります。
- 「実害の証明(診断書)」「精神的に辛かった」と口で言うだけでなく、医師の診断書によって**「うつ病」という実害**が証明されたことも、金額を引き上げる重要な要素です。
【まとめ】慰謝料3つのグレード
ここまで作成した3つのケースを読者に見せることで、自分の状況がどこに当てはまるか判断しやすくなります。
3. 高額慰謝料のカギは「回数」と「期間」の立証にある

上記の事例から分かることは、「ただ浮気をした」という事実だけでは、高額な慰謝料は取れないということです。
裁判で「悪質だ(慰謝料を高くすべきだ)」と認めさせるには、以下の主張を証拠付きで行う必要があります。
- ×「夫は浮気をしていました」
- ○「夫は3年間にわたり、週1回のペースで、合計100回以上も不貞行為を繰り返していました」
「1枚の写真」vs「調査報告書」
- たった1回のホテル写真:
- 相手は「魔が差して1回だけ間違いを犯した。反省している」と主張し、減額を求めてきます。
- 詳細な調査報告書(複数回・期間の証明):
- 「〇月〇日、×月×日…」と継続的な関係が証明されれば、「1回だけ」という言い逃れは通用しません。「常習性がある」として増額事由になります。
【比較表】言い逃れの可否と結果
| 比較項目 | ① たった1回のホテル写真(弱い証拠) | ② 詳細な調査報告書(強い証拠:複数回・期間証明) |
| 証拠の内容 | 「〇月〇日に一度だけ、ホテルに入った写真」があるのみ。 | 「4月、5月、6月…と、月に数回のペースで継続的に会っていた記録」がある。 |
| 相手の言い分 (弁護士の戦術) | 「魔が差して、その日1回だけ間違いを犯しました。深く反省しています」 (※他の日は会っていないとシラを切る) | (ぐうの音も出ない) 「1回だけ」という嘘が明白なため、言い訳ができない。 |
| 裁判官の認定 | 「出来心(一過性)」 継続的な愛人関係とまでは断定できないため、悪質性は低いとみなす。 | 「常習性・継続性あり」 計画的かつ長期的に配偶者を裏切り続けており、悪質性が高いとみなす。 |
| 慰謝料への影響 | ↓ 減額される (相場の下限寄りになる) | ↑ 増額される (相場の上限、またはそれ以上を狙える) |
この表のポイント
この比較で最も重要なのは、**「不倫裁判では『1回だけ』という主張が、最強の減額カードになる」**という現実です。
- 「1回」と主張されるリスク相手が弁護士をつけると、証拠が一つしかない場合、必ずと言っていいほど「あれはたった一度の過ちでした」と主張してきます。
裁判官も「他に証拠がない以上、反復継続していたとは認定できない」となり、慰謝料を下げざるを得ません。 - 報告書が「嘘」を暴く探偵の調査報告書で「複数回(例:3回以上)」の不貞行為が証明されていれば、相手の「1回だけ」という主張は**「裁判所に対する嘘」になります。
これにより、「不倫の事実」+「反省せずに嘘をつく悪質な態度」**という2つの理由で、慰謝料の増額を勝ち取ることができるのです。
結論:
費用を惜しんで証拠を「1回分」で止めてしまうと、裁判で数十万円〜100万円単位の減額を許してしまい、結果的に損をする可能性があります。
まとめ:証拠の「厚み」が金額の「厚み」になる
慰謝料の金額は、相手の行為がいかに酷かったか、つまり**「不貞の量(期間・回数)」と「質(内容)」**によって決まります。
そして、それを証明できるのは、あなたの感情ではなく**「客観的な証拠」**だけです。
もしあなたが、「相手に相応の償いをさせたい」「相場以上の慰謝料を請求したい」と考えるなら、中途半端な状態で動かず、まずは弁護士や探偵に相談し、**「悪質性を立証できるだけの証拠(厚み)」**を確保することから始めてください。
そのひと手間が、最終的な解決金(慰謝料)を100万円、200万円と変えることになるのです。

『3年も続いていた』といくら叫んでも、証拠がなければ裁判では『たった一度の間違い』として処理されるわ。……そんな理不尽な『大幅値引き』、私が許さない。過去の悪事も全て掘り起こして、きっちり定価で請求しなさい。
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