「夫が浮気をした。もう生理的に受け付けないから離婚したい」 そう思っても、相手が「たった一回だけの過ちだ」「やり直したい」と離婚を拒否した場合、どうなるのでしょうか。
実は、法律上の離婚原因(民法770条)である「不貞行為」があったとしても、裁判所が**「これくらいの浮気なら、まだやり直せる(離婚までは認めない)」**と判断するケースが稀に存在します(裁量棄却)。
確実に離婚を勝ち取るためには、不貞の「回数」や「期間」によって、**「もはや夫婦関係は完全に壊れている(破綻している)」**と裁判官に認めさせる必要があります。
本記事では、不貞行為の内容や頻度が、離婚請求の結論にどう影響するのか、裁判事例を交えて解説します。
1. 法律のルール:「不貞」=「離婚」とは限らない?
まず、大原則として「不貞行為」は法定離婚事由(法律で認められた離婚理由)です。証拠があれば、基本的には離婚請求は認められます。
しかし、裁判官には**「一切の事情を考慮して、婚姻の継続が相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる(民法770条2項)」**という権限があります。
つまり、**「浮気は事実だが、一回きりの魔が差しただけで、深く反省しているし、子供も小さい。まだ修復可能だろう」**と判断されれば、離婚が認められないリスクがゼロではないのです。
だからこそ、確実に離婚するためには**「修復不可能なほどの裏切り(回数・期間)」**を立証することが重要になります。
2. 【裁判事例】回数・内容による「離婚判決」の違い
では、実際どのようなケースで離婚が認められ、どのようなケースで争いになるのでしょうか。
【事例①】継続的・悪質な不貞(離婚:認められる)
- 状況: 夫が職場の同僚と約1年間にわたり交際。週1回のペースでホテルを利用し、旅行にも行っていた。夫は「遊びだった、離婚したくない」と主張。
- 判決: 離婚を認める
- ポイント: 1年という期間と、週1回という頻度は「一時的な出来心」を超えています。裁判所は「信頼関係は完全に破壊されており、修復は不可能」と判断し、夫の拒絶を退けて離婚を命じました。
- 教訓: 「継続性」の証拠があれば、相手がどれだけ抵抗しても離婚できます。
【事例②】一回限りの不貞・風俗利用(離婚:争いになる可能性あり)
- 状況: 妻が夫のスマホを見て、過去に一度だけ風俗店を利用したこと、あるいは一度だけ元カノとホテルに行った事実を発見。夫は土下座して謝罪し、離婚を拒否。
- 判決: 離婚が認められない(請求棄却)可能性あり
- ポイント: 不貞行為の事実はありますが、「たった一度」であり、夫が真摯に反省し、家庭生活を大事にしている場合、裁判所は「まだ夫婦関係が破綻したとまでは言えない」として、離婚請求を退ける(棄却する)ことがあります。
- 教訓: 一回だけの証拠では、「絶対に離婚したい」という希望が通らないリスクがあります。
【事例③】別居を伴う不貞(離婚:確実に認められる)
- 状況: 夫が不倫相手の家に転がり込み、妻との別居を開始して2年が経過。
- 判決: 離婚を認める
- ポイント: 不貞行為に加え、「同居義務違反(家を出て行った)」が重なっています。不倫相手との生活を選び、夫婦としての実態が失われているため、裁判所は迷わず離婚を認めます。
3. 「絶対に離婚したい」なら、証拠を積み重ねよ
上記の事例からわかるように、相手が離婚を拒んでいる場合、確実に離婚を成立させる鍵は**「不貞の常習性」や「期間の長さ」**の証明です。
もしあなたが、一度の浮気を疑って「離婚したい!」と感情的になり、証拠が不十分なまま裁判を起こしてしまうと、「やり直しなさい」という不本意な判決を受けるリスクがあります。
探偵の調査報告書が「離婚の決定打」になる
そこで重要になるのが、探偵による調査です。
- 「1回だけの過ち」と言わせないために 調査によって「〇月〇日、×月×日、△月△日…」と、複数回の密会証拠を押さえることができれば、それは「魔が差した」のではなく「継続的な裏切り」であることが証明されます。これだけの証拠があれば、裁判官も「これは修復不可能だ」と判断し、あなたの離婚請求を認めざるを得なくなります。
まとめ:確実に縁を切るための準備
「離婚事由」として不貞を主張する際、その事実が「重ければ重いほど」、あなたの言い分は通りやすくなります。
- 軽い不貞(疑惑レベル・単発) → 相手に粘られると離婚できないリスクがある。
- 重い不貞(継続的・頻回) → 相手が拒否しても、強制的に離婚判決を勝ち取れる。
「相手と絶対に別れたい」「新しい人生を歩みたい」と強く願うのであれば、焦って動く前に、まずは**「言い逃れのできない、継続的な証拠」**を確保してください。それが、あなたを苦しめる結婚生活から解放する、唯一確実な鍵となります。



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