不倫(不貞行為)の慰謝料請求において、最もよくある質問の一つが「相場はいくらですか?」というものです。 一般的には「100万円〜300万円」と言われますが、この幅は非常に大きいです。
なぜ、これほどの差が生まれるのでしょうか。 裁判所は、不貞行為の**「回数」「期間」「内容(悪質性)」、そして「夫婦関係へのダメージ(離婚したか否か)」**を総合的に判断して金額を決定します。
本記事では、実際の裁判事例(判例の傾向)をもとに、どのようなケースで慰謝料が高額になり、逆にどのようなケースで減額されるのかを解説します。
1. 裁判所が金額を決める「4つの判断基準」
事例を見る前に、裁判官がどこを見ているかを知っておきましょう。主に以下の要素が金額を左右します。
- 不貞期間と頻度:
- 長期間(数年単位)や、高頻度(週に何度も密会)であればあるほど増額されます。
- 不貞の内容:
- 不倫相手との間に子供ができた、自宅に連れ込んだ、などの事情は悪質性が高いと判断されます。
- 婚姻期間と子供の有無:
- 婚姻期間が長く、幼い子供がいる場合、家庭崩壊のダメージが大きいとして増額されます。
- 夫婦関係の結末:
- 不倫が原因で「離婚した」場合は高く、「離婚しなかった(再構築)」場合は低くなるのが原則です。
2. 【事例紹介】ケース別・慰謝料認定額の違い
では、具体的なケースで金額の差を見てみましょう。 ※以下は過去の判例傾向に基づくモデルケースです。
【ケースA】離婚せず、回数も特定できなかった事例
- 状況: 夫が職場の部下と浮気。妻はLINEで浮気に気づいたが、決定的な証拠は少なく、夫も「数回食事に行っただけ」と主張。最終的に夫婦は離婚せず、やり直すことを選択。
- 認定された事実: 不貞期間数ヶ月、回数は不明確。
- 判決(慰謝料額): 約50万〜100万円
- 【解説】 「離婚に至らなかった」ことで精神的苦痛は比較的小さいとみなされます。また、「回数や期間を立証する証拠」が弱かったため、悪質性が低いと判断され、金額は低めに抑えられました。
【ケースB】不倫が原因で離婚、期間も長かった事例
- 状況: 結婚10年目。夫が特定の女性と約2年にわたり交際。探偵の調査により、月2〜3回のペースでラブホテルを利用していた事実(計数十回)が立証された。妻は精神的ショックで離婚を決意。
- 認定された事実: 不貞期間2年、継続的な肉体関係、これが原因で離婚。
- 判決(慰謝料額): 約150万〜250万円
- 【解説】 これが典型的な「離婚事案」の相場です。ポイントは**「2年間にわたり継続していた事実」が証拠によって証明された点**です。単発の過ちではなく、禁じられた関係を継続した「悪意」が認定されました。
【ケースC】極めて悪質(妊娠・同棲)な事例
- 状況: 夫が不倫相手と半同棲状態になり、生活費を家に入れなくなった。さらに不倫相手が妊娠・出産。妻はうつ病を発症し、離婚。
- 認定された事実: 不貞期間5年以上、不貞相手の妊娠、配偶者への遺棄(生活費未払い)。
- 判決(慰謝料額): 約300万〜500万円
- 【解説】 極めて悪質性が高いケースです。単なる浮気を超え、一つの家庭を完全に破壊したとみなされます。「期間の長さ」に加え、「妊娠」「別居の強行」といった事実が、慰謝料を相場の上限(あるいはそれ以上)まで引き上げました。
3. 高額慰謝料のカギは「回数」と「期間」の立証にある
上記の事例から分かることは、「ただ浮気をした」という事実だけでは、高額な慰謝料は取れないということです。
裁判で「悪質だ(慰謝料を高くすべきだ)」と認めさせるには、以下の主張を証拠付きで行う必要があります。
- ×「夫は浮気をしていました」
- ○「夫は3年間にわたり、週1回のペースで、合計100回以上も不貞行為を繰り返していました」
「1枚の写真」vs「調査報告書」
- たった1回のホテル写真:
- 相手は「魔が差して1回だけ間違いを犯した。反省している」と主張し、減額を求めてきます。
- 詳細な調査報告書(複数回・期間の証明):
- 「〇月〇日、×月×日…」と継続的な関係が証明されれば、「1回だけ」という言い逃れは通用しません。「常習性がある」として増額事由になります。
まとめ:証拠の「厚み」が金額の「厚み」になる
慰謝料の金額は、相手の行為がいかに酷かったか、つまり**「不貞の量(期間・回数)」と「質(内容)」**によって決まります。
そして、それを証明できるのは、あなたの感情ではなく**「客観的な証拠」**だけです。
もしあなたが、「相手に相応の償いをさせたい」「相場以上の慰謝料を請求したい」と考えるなら、中途半端な状態で動かず、まずは弁護士や探偵に相談し、**「悪質性を立証できるだけの証拠(厚み)」**を確保することから始めてください。
そのひと手間が、最終的な解決金(慰謝料)を100万円、200万円と変えることになるのです。



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